かながわボランティアセンター

社会福祉法人 神奈川県社会福祉協議会

協働事業のご紹介Kanagawa Volunteer Center

‘ユッカの会’と‘かながわVC’ 協働レポート

●神奈川県社協「協働モデル事業」として協働スタート

ユッカの会は、中国残留邦人帰国者家族および外国につながる人(外国籍を有する人、帰化した人等、出自が外国と関わりがある人)とボランティアが“ともに学び、ともに楽しむ”姿勢で、心豊かに充実した生活を送ることを目的に長年活動を続けているボランティアグループです。

令和3年度の神奈川県社協の助成事業「地域福祉活動支援事業(協働モデル助成)」においてかながわVCの提案テーマ『外国にルーツをもつ住民の高齢化にともなう生活課題への対応』に申請いただき協働がスタート。令和5年度に至る3年間で、「多文化高齢社会ネットかながわ(TKNK)」の立ち上げや情報の発信、講座開講等、様々な活動を展開しています。

●外国につながる人たちが迎えた高齢期における課題

神奈川県には横浜中華街や川崎市の桜本地区等、集住地域が点在しており、全国47都道府県で4番目に外国人在県者が多く、20万人を超える人たちが生活しています。外国につながる人を含めるとその数はさらに多く、把握することが難しい状況にあります。


※県内の外国人数の調査結果について(令和5年1月1日現在)神奈川県HPより引用

神奈川県では全国に先駆けて外国人支援に取り組んできており、神奈川県社協でも日本語教室マップの作成や神奈川県医療通訳制度検討委員会の委員等、多様な支援を展開してきましたが、当時は外国につながる人たちの「高齢者に関する課題」はまだ表面化していませんでした。

そのような中でユッカの会から、高齢期を迎えた中国残留邦人の方が施設に入所できない、安心して地域で生活を送ることができない状況にあるという話を伺いました。これは中国残留邦人に限らず、他の外国につながる高齢者にも共通した課題であり、今後の神奈川県にとって重大な課題であると捉え、ユッカの会と共に「多文化高齢社会ネットかながわ(TKNK)」を立ち上げるに至りました。

●TKNKの取り組み

TKNKのメンバーはユッカの会、社会福祉士、介護福祉士、日本語教師、神奈川県社協の職員等、福祉や日本語教育の多領域から構成されています。

TKNKの事業は大きく分けて5つに分かれます。それぞれの事業はメンバーの各分野の専門性を発揮し、実施しています。

①県民講座
県民を対象に外国につながる高齢者に関する興味・関心を持ってもらう

②シンポジウム
県内のみならず、広く外国につながる高齢者への支援に関するネットワークを構築する

③やさしい日本語講座
すべての人にとって わかりやすいコミュニケーションを保証するために、「やさしい日本語」の普及を図る。
※当講座では、より多くの人に伝えることを目的として難しいことばを言い換える等、日本語の話し方や書き方の工夫の習得、普及を目指しています。
例:津波が来るので高台に避難してください→大きななみがきます。高いところににげてください。

外国につながる高齢者の研究に関するデータベースの作成
外国につながる高齢者に関する情報を集約

⑤調査
高齢当事者へのヒアリング、支援機関へのアンケート調査・ヒアリングを行い、実態を把握する

●今後に向けて

やさしい日本語講座では、日本語をどのように使うかという技術面からだけではなく、なぜ今、「やさしい日本語」が必要とされるのか、地域共生社会への意識の中で育つマインドについても取り上げ、普及・啓発を行っています。

調査では社会福祉士、介護福祉士や神奈川県社協のネットワークを活かし、外国につながる高齢当事者へのヒアリングや、居宅介護支援事業所・地域包括支援センター・福祉施設・福祉事業所へのヒアリングを行いました。当事者が感じている悩みや想いを把握すると同時に、支援者側の課題や支援方法の工夫を知ることができました。この調査を踏まえ、今後は県民に広く外国につながる高齢者の状況を周知するとともに、関係団体と課題を共有しながらネットワークをさらに広げ、よりニーズに沿った支援が展開できるよう働きかける必要があります。

様々な組織や人との関わりの中で熱心な討論を重ね、当課題に関わる人々の輪が大きく広がりました。その一角にあるかながわVCは、広域VCとしての視点やネットワークを活かし、外国につながる高齢者が安心して住み慣れた場所で生活を続けることのできる「地域の在り方」について、これからも考えていきます。